マスクの効能

 マスクは飛沫感染・空気感染予防、花粉症対策として習慣的に使われてきました。日本ではSARS-COV2感染症対策として令和二年に布マスクが国民に配られましたが、後述する様に布マスクに感染を防ぐ効果は認められていません。

 マスクは細菌感染やウィルス感染に効果があると言われているが、実際にどれくらい効果があるのか言われる事はありません。マスクの目的は空気中に漂う粒子を鼻や口に入れない様にする事と着用者が咳やくしゃみをした時に排出される飛沫を減らす事です。

 季節性アレルギー性鼻炎の原因として最も多いスギ花粉の大きさは三〇~四〇ナノメートル、この大きさの物はマスクの表面で六分の一ほど止められます。インナーマスクをする事で更に防ぐ事ができます。[1]ウィルスの空気感染で問題になる飛沫粒子径は五ナノメートル以下です。スギ花粉より小さな物は通りやすくなります。30~40ナノメートルで止められるのは1/6、それよりも小さい物は更に透過しやすいのは自明です。マスクをすると花粉がマスクの繊維にくっつくようにウィルスがあったとするとマスクの表面に付着します。フィルターとなるので跳ね返すのではなく付着します。空気清浄機のフィルターが汚れる様にマスクの表面は空中を漂う様々な粒子がくっつきます。医療機関で行われた研究ではマスクの外側にウィルスが付着していたのは10%でした。特に6時間以上使用したマスクは高率になります。[2]花粉症や感染予防の為には定期的なマスクの交換が必要になります。基本は使い捨てです。あなたが手術を受ける時医者や看護師が何回も使ったマスクをしていたらどの様に思うでしょうか?マスクが感染予防になるとしたらマスクはウィルスや細菌だらけと同義です。一度つけて外したマスクを再度使ったらもうマスクをしている意味が無くなってしまします。

 まず感染者から自分が感染するのを防ぐ事ができるかの検証ですが、医療従事者が医療用のマスクを使用した場合と使用しなかった場合のウィルス感染症の発症割合に優位な差はありませんでしたが、N95マスクに関しては有意差が出ています。[3]これは医療機関での使用です。感染症の患者がいる病棟も含まれています。つまり適切なマスクの使用をし、かつ感染性を持つ人が存在する場合です。

 子供が上気道炎に感染した家庭でのマスク使用の研究でも使用した場合としなかった場合は付けている方が感染者が多くなりましたが優位な差はありませんでした。[4]つまり家庭内で感染予防の為には効果が認められないという事です。

 反対にウィルスを排出している人にマスクを付けた場合は飛沫の拡散を減少させる効果が認められています。しかし完全に防ぐ事ができません。[5] 

 ウィルスを放出する人が同じ空間にいて感染性を持つかの検証ではウィルス排泄量が多く頻回に咳をしている人がいた場合は換気が不十分な狭い空間(50立方メートル)では感染するリスクがあるという結果が出ています。咳をせずに普通に呼吸をしていると感染のリスクは低い。これは反対に言うとウィルスを放出する人がいても換気をしていれば感染のリスクは限りなく低いという事です。[6]

 では今盛んに言われている症状の無い人、無症候性キャリアに感染性があるかどうかです。SARS -COV-2ウィルスに不顕性感染をしている場合に人に感染を起こさせるかの研究が、中国の武漢に於いて行われた疫学調査と広東で行われた一千万人の無症候性キャリアの接触者の調査では感染性が認められませんでした。[7,8]

 これ等をまとめて考えると咳やくしゃみといった症状が感染症が原因で起こっている人以外がマスクを着用する事に意味は無い、もし頻回に咳をしていたとしても換気が十分なら必要なし、となります。

 マスクをする事の弊害は頭痛、認知機能の低下、呼吸困難、痒み、皮疹などです。頭痛や認知機能の低下はマスクをする事で血中酸素濃度が下がり、血中二酸化炭素濃度が上がる事が原因と考えられます。[9]

 健常人では血中酸素飽和度が少し下がる事は問題ありませんが、呼吸器疾患を持っている場合は問題になりますし血中二酸化炭素濃度も同様です。

 またコミュニケーションが取りづらい等の弊害が現れます。特にまだ言語的コミュニケーションが発達していない子供には影響が大きいと言われます。

 その他マスク内で口を開けている事によりドライマウスになり口腔内の細菌やウィルスが増殖しやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが上がると言われます。

 またマスクをする事で感染予防になると思い込み軽度の症状が有っても外出しても良いと考えてしまいます。マスクをしていても感染を広げます。マスクをするよりも体調の悪い時は休む事の方が大切です。

 マスクをする事による弊害も考慮に入れ、闇雲に着用するのでは無く、必要な人と状況(COVID -19患者と接触者が換気の十分で無い狭い環境に居る)を鑑みて最小限着用することが求められます。

参照 コピペです。

[1] 花粉症環境保護マニュアル-2019 環境省

[2]Abrar Ahmad Chughtai, Sacha Stelzer-Braid,等  contamination by respiratory viruses on outer surface of medical masks used by hospital healthcare workers.

Chughtai et al. BMC Infectious Diseases (2019) 19:491 https://doi.org/10.1186/s12879-019-4109-x 

[3]MacIntyre CR; Chughtai AA, 2015, ‘Facemasks for the prevention of infection in healthcare and community settings’, BMJ: British Medical Journal, vol. 350, pp. h694, http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h694

[4]MacIntyre CR; Cauchemez S; Dwyer DE; Seale H; Cheung PK; Browne G; Fasher M; Wood JG; Gao Z; Booy R; Ferguson N, 2009, ‘Face mask use and control of respiratory virus transmission in households’, Emerging Infectious Diseases, vol. 15, pp. 233 – 241, http://dx.doi.org/10.3201/eid1502.081167

[5]Leung, N. H. L., Chu, D. K. W., Shiu, E. Y. C., Chan, K. H., McDevitt, J. J., Hau, B. J. P., Yen, H. L., Li, Y., Ip, D. K. M., Peiris, J. S. M., Seto, W. H., Leung, G. M., Milton, D. K., & Cowling, B. J. (2020). Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks. Nature Medicine, 26(5). https://doi.org/10.1038/s41591-020-0843-2

[6]Michael Riediker; Dai-Hua Tsai Estimation of SARS-CoV-2 aerosol emissions from simulated patients with COVID-19 and no to moderate symptoms DOI: 10.1101/2020.04.27.20081398

[7]Ming Gao , Lihui Yang , Xuefu Chen , Yiyu Deng , Shifang Yang , Hanyi Xu ,Zixing Chen, Xinglin Gao 

A study on infectivity of asymptomatic SARS-CoV-2 carriersMay 2020Respiratory Medicine 169:106026 DOI: 10.1016/j.rmed.2020.106026

[8]Cao, S., Gan, Y., Wang, C., Bachmann, M., Wei, S., Gong, J., Huang, Y., Wang, T., Li, L., Lu, K., Jiang, H., Gong, Y., Xu, H., Shen, X., Tian, Q., Lv, C., Song, F., Yin, X. & Lu, Z., Post-lockdown SARS-CoV-2 nucleic acid screening in nearly ten million residents of Wuhan, China 1 12 2020, In: Nature Communications. 11, 1

[9]Elisheva Rosner Adverse Effects of Prolonged Mask Use among Healthcare Professionals during COVID-19     J Infect Dis Epidemiol 2020, 6:130 DOI: 10.23937/2474-3658/1510130 Volume 6 | Issue 3