ウィルス

 HIVが問題になり数十年、いまだにHIVは解決されていない。インフルエンザさえ毎年流行する、薬が開発されたが死亡者は未だにいる。その他にも一度克服されたと思われる病原性微生物が時折流行する。人の努力を嘲笑うかの様に。

 そもそも人がウィルスを抑え込むことができるのだろうか?ウィルスは敵なのか?常在するウィルスもいる。今日では腸内の細菌のアンバランスが病気の原因になると言われている。病原性を持つ細菌も腸内細菌の状況によっては病原性を持たない。人間はホモ・サピエンス単体ではなく、そこに常在するウィルス、細菌、真菌、虫が作り出す生態系である。

 今日、人間は自然から独立した存在で、自然を制御できると考える。西洋文明である。多くの文化圏では自然には神が宿り敬い自然と共存共栄する生き方をしてきたが西洋文明と触れる事で経済原理の元自然を制御しようとしてきた。自然は人が搾取をする対象である。

 人間は一つの生態系であり、外の生態系と相互作用をし連続的な繋がりを持つ。独立した存在であるというのは人の幻想でしかない。ウィルスが病原性を持つという事はウィルスが病原性を持つ様な環境を持っているという事である。

 この複雑な系の中でこれまでに無かったウィルスが出てくるという事は自然というシステムの中で何かしら必然性があるからである。これは良いとか悪いとか言う次元ではない。地球に生命が誕生して以降多くの気候変動や病原性微生物が生物を襲ってきた事だろう。今の状況は進化の過程である。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」奢る平家も久しからず。歴史に学ぶ。

 自分が今地球という環境の中で、その環境にどの様なインパクトを与えているのか?自分という生態系をどの様に動かしているのか?この事を考えなければウィルスは人を繰り返し襲うであろう。

 天災、疫病、飢饉は繰り返し人類を襲い、戦争も繰り返される。自分という物は虚ろなのに在ると思い込み、在ることを確認する為に周りをいじくり回す。そして因果応報。輪廻を繰り返す。因果は自分が無い事を悟れば空に帰す。光と共に。